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人手不足の切り札?顧客を「ファン」から「仲間」に変える採用の新潮流【三上康一講師特別コラム】

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人手不足の切り札?顧客を「ファン」から「仲間」に変える採用の新潮流【三上康一講師特別コラム】

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上 康一(みかみ こういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

■深刻化する人手不足と新たな採用戦略の必要性

株式会社東京商工リサーチの発表によると、2025年4月に人手不足を原因とする企業の倒産件数は36件に達し、前年同月比で44.0%増加、2013年以降の4月としては最多となりました。倒産原因の内訳を見ると、「従業員の退職」が14件(前年比100.0%増)、「求人難」が10件(同66.6%増)、「人件費高騰」が12件(前年から横ばい)となっています。

参考:PR TIMES MAGAZINE「「採用広報」開始から5年。2900店舗超のクルー採用を支えるオウンドメディアリクルーティング」
画像引用:株式会社東京商工リサーチ「2025年4月「人手不足」倒産 最多の36件 人材の流動化が進み、「求人難」「従業員退職」が急増

このような状況では、求人広告に頼るだけでは十分な人材を確保できず、現場の負担が増す一方になると言えます。その中で、マクドナルドが2004年に実施した「顧客スカウト」というユニークな採用戦略が、大きな注目を集めています。この戦略は、店を訪れる顧客の中から、スタッフとして働く可能性があり、かつ店の文化に共感している人材を見つけ出す方法です。

この記事では、マクドナルドの成功事例とともに、同じく顧客との信頼関係を大切にする小規模な洋食店が実践している「顧客スカウト」の取り組みを紹介します。この新しい採用戦略がどのように人手不足を解消し、店舗の成長を促しているのかを見ていきましょう。

参考:PR TIMES MAGAZINE「「採用広報」開始から5年。2900店舗超のクルー採用を支えるオウンドメディアリクルーティング
参考:株式会社東京商工リサーチ「2025年4月「人手不足」倒産 最多の36件 人材の流動化が進み、「求人難」「従業員退職」が急増

■マクドナルドの顧客スカウト戦略:成功の軌跡

2004年、売上急拡大に伴う深刻な人手不足に陥ったマクドナルドは、人材募集コストを倍増させたにも関わらず、採用者を増やすことができませんでした。そこで同社が着目したのは、意外にも「自店の顧客」でした。

顧客スカウトプロジェクトは、日頃からマクドナルドを利用している顧客の中から、「マクドナルドの仕事に興味がありそう」「明るく元気でコミュニケーション能力が高そう」と判断できる人材を店舗スタッフがスカウトするというものです。具体的には、店舗スタッフが顧客との会話の中で仕事への興味を探り、可能性を感じた顧客には積極的に声をかけ、応募用紙を渡しました。その後、通常の面接を経て採用に至ります。

この一見斬新な取り組みによって、マクドナルドは低コストで質の高い人材を効率的に集めることに成功しました。では、なぜ顧客スカウトが有効だったのでしょうか?

理由その1:ミスマッチの低減

頻繁に店舗を利用する顧客は、マクドナルドの雰囲気や仕事内容をある程度理解しています。そのため、入社後のギャップが少なく、早期離職を防ぐ効果が期待できます。

理由その2:採用コストの抑制

高額な求人広告に頼る必要がなく、既存の店舗スタッフの活動範囲内で採用活動が完結するため、大幅なコスト削減につながります。

理由その3:エンゲージメントの高い人材が獲得できる

顧客としてマクドナルドに愛着を持っている人材は、仕事へのモチベーションも高く、積極的に業務に取り組んでくれる可能性が高いといえるでしょう。

マクドナルドの事例は、人手不足に悩む多くの企業にとって示唆に富んでいます。特に、顧客との接点が多い飲食業や小売業においては、この顧客スカウトの考え方を応用できるのではないでしょうか。

実際、マクドナルドと同様の顧客スカウト活動で成果を上げている小規模な飲食店も存在します。彼らは、常連客との日々のコミュニケーションを大切にし、「うちで一緒に働いてみませんか?」と気軽に声をかけることで、新たな仲間を見つけています。

■顧客との信頼が生む採用:小規模洋食店の事例

同店は経営者夫婦と数名のパートタイマーで運営する小規模な洋食店です。ホールを担当する妻と厨房を担当する夫は、手が空くと積極的に顧客と会話をします。単なる雑談に留まらず、常連客を中心に、お店の雰囲気に共感している人物を丁寧に観察し、スタッフ候補として適切かどうかを判断します。

なお、週に何度も来店するヘビーユーザーは、スタッフ候補の対象とはしません。同店はスタッフに顧客へ提供する料理と同じ品質の「まかない」を提供しますので、もともとのヘビーユーザーがスタッフとして働くようになると、当然ながら顧客として来店しなくなります。その結果、その顧客自身の飲食による売上が見込めなくなるリスクがあるためです。

同店の経営者夫婦が求めるのは、本業を持ちながらも、限られた時間の中で責任感を持って働ける人材です。過去の経験から、「いつでもシフトに入れる」という理由で採用したスタッフよりも、時間的な制約がある中で高いパフォーマンスを発揮できる人材こそが、真の貢献者であると確信しているからです。

この洋食店では、求人広告のような形式的な手段ではなく、日々の顧客との接点から自然な形で人材を発掘することで、お店の理念に共感し、高い志を持つ人材が集まっています。これは単なる人材確保の成功例を超え、顧客との信頼関係を育み、共に成長していく理想的な職場環境を実現していると言えるでしょう。ただし、顧客スカウトを実施する際には留意すべき点もあります。

■顧客スカウト実施の際の留意点

例えば、ある別の店舗では、スカウト対象の顧客に対し、名刺大のカードを手渡しています。そのカードには「当店では、人間的な魅力に溢れ、コミュニケーション力があり、当店のコアメンバーになれるような方と一緒に働きたいと考えています。当店のスタッフとして活躍することにご興味があれば、ぜひご連絡ください」といったメッセージとともに、連絡先が記載されています。これは、店内において口頭でスカウトすることで、声を掛けられなかった他の顧客に不快感を与えないための配慮です。

募集広告が広範囲に網をかける「投げ網漁」だとすれば、顧客スカウトはターゲットを絞った「一本釣り」と言えるでしょう。スカウトという行為そのものが、もともと働く気がなかった顧客の心を動かし、「せっかく声をかけてくれたのだから働いてみようかな」と思わせる可能性も秘めています。

人手不足が深刻化する現代において、マクドナルドやこの小規模洋食店の事例は、固定観念にとらわれない新しい採用戦略の可能性を示唆しています。顧客との繋がりを大切にし、信頼関係を築くことこそが、優秀な人材を惹きつけ、共に成長していくための重要な鍵となるのではないでしょうか。

■まとめ:顧客との繋がりが拓く、新たな採用の可能性

人手不足が深刻化する中で、企業は従来の採用手法だけに頼ることなく、新たなアプローチを見出すべきと言えますが、その一つに「顧客スカウト」が挙げられます。マクドナルドが2004年に導入したこの戦略は、店舗に訪れる顧客の中から、既に店の文化に共感し、仕事に対する興味を持っている人材をスカウトする方法です。この取り組みは、ミスマッチを減らし、採用コストを抑えつつ、高いエンゲージメントを持った人材を効率的に集めることに成功しました。

また、同様の戦略を実践している小規模な飲食店もあります。顧客との信頼関係を大切にし、スタッフとして活躍してくれる可能性のある人物を見極めて声をかけることで、魅力的な人材を確保しています。これにより、店舗は成長を続け、顧客とともに共鳴する理想的な職場環境を作り上げています。

「顧客スカウト」の最大のメリットは、求人広告に頼らず、既存の顧客との関係性を深めることで自然に優秀な人材を発掘できる点にあります。この新しい採用戦略は、人手不足を解決するだけでなく、店舗の業務効率化や顧客との絆を強化する効果もあります。人手不足に悩む多くの企業にとって、顧客スカウトは大きな可能性を秘めた手法であり、今後ますます注目されることでしょう。

 

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上 康一(みかみ こういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

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