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三上康一氏【人材不足・人材育成】

求人広告の「見えない壁」を破る:人が集まらない理由とハーズバーグ理論に基づく採用戦略【三上康一講師特別コラム】

求人広告の「見えない壁」を破る:人が集まらない理由とハーズバーグ理論に基づく採用戦略【三上康一講師特別コラム】
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求人広告の「見えない壁」を破る:人が集まらない理由とハーズバーグ理論に基づく採用戦略【三上康一講師特別コラム】

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上 康一(みかみ こういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

■求人広告で応募が集まらない理由は「広告文」だけではない

「何度求人広告を出しても、なかなか応募が来ない」「やっと採用できても、すぐに辞めてしまう」――このような声は、採用市場が厳しさを増す中で多くの企業から聞かれるようになっています。特に応募者が少ない原因を「広告文が弱いから」「媒体の選定ミス」と考える方も少なくありませんが、実は求人広告の文章以上に大切なのが、職場そのものの“中身”です。 

SNSや口コミサイトの発展により、求職者が企業を選ぶ基準は年々高度化・多様化しており、「企業の言葉」ではなく「企業の実態」を見極める力が高まっています。つまり、求人広告でどれだけ魅力的な言葉を並べても、職場環境が伴っていなければ、応募も採用後の定着も難しいのです。

この問題の本質を理解する上で参考になるのが、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「動機づけ=衛生理論」です。

■「衛生要因」を訴求したがる罠

ハーズバーグは、職場におけるモチベーションには2つの異なる要因が影響を及ぼすことを実証研究で明らかにしました。それが「衛生要因」と「動機づけ要因」です。

まず、「衛生要因」とは、職場の基本的な環境や制度のことを指します。例として以下が挙げられます。

* 給与や福利厚生
* 労働時間や休日数
* 上司のマネジメントスタイル
* 人間関係や職場の雰囲気
* 会社の理念や方針の明確さや浸透度合い

これらが充足していないと、社員は職場に対して不満を持ち、やがて離職を検討します。そして、ハーズバーグは、衛生要因を満たすことで不満足を小さくすることはできるが、満足度を大きくできるわけではないとしています。 

多くの企業が求人広告で失敗する典型的なパターンが、衛生要因ばかりを強調してしまうことです。たとえば「高給与」「完全週休二日制」「残業なし」といった条件面のアピールは、確かに求職者にとって「安心して働けそう」「ブラック企業ではなさそう」といった判断材料になります。つまり、不安を抱かせないという意味での応募ハードルを下げる効果はあります。

しかし、こうした情報だけでは「この仕事に挑戦したい」「ここで働きたい」といった前向きな関心や意欲を引き出す力は弱いのです。求職者は複数の求人を比較する際、単に条件が悪くない会社ではなく、「自分の成長ややりがいが得られそうな職場」を選びがちです。そのため、衛生要因だけを強調する広告は、他の魅力的な求人に埋もれてしまい、応募が集まりにくくなるのです。

さらに、仮に応募があったとしても、「条件が悪くなさそうだから、とりあえず応募してみよう」という消極的な理由に基づいた応募になりやすく、採用後に「思っていたほどやりがいがない」「期待していた成長機会がない」といった理由で、早期離職につながるリスクも高まります。

■「動機づけ要因」の不足が引き起こす「魅力の欠如」

さらに重要なのが、満足度を高めるための要素である「動機づけ要因」です。ハーズバーグによれば、以下のような点が人のやる気や定着を左右します。

* 仕事の達成感
* 自分の成果が認められること
* 自律性や責任ある仕事の機会
* 仕事内容そのものが魅力的であること
* 昇進や成長のチャンスがあること

これらが充足している職場で働く人は仕事にやりがいを感じ、「この会社で頑張りたい」という気持ちが生まれます。つまり、人が集まり、定着し、活躍する職場は、この動機づけ要因が充足しているのです。

求人広告で応募者が少ない、あるいは定着率が低い背景には、この動機づけ要因の不足が隠されています。求職者は、「この会社で働いたら、自分はどのように成長できるのか」「どんなやりがいを感じられるのか」「自分の仕事がどのように評価されるのか」といった点を重視しています。衛生要因ばかりを前面に出した求人広告では、これらの根源的な欲求に応えることができず、結果として応募者が集まらないのです。

■解決策:職場の「中身」を整え、動機づけ要因を訴求する

広告に書くことを工夫する前に、まずは自社の衛生要因と動機づけ要因を冷静に見直し、職場の“土台”を整えることが最優先課題です。それができていれば、過度なキャッチコピーに頼らなくても、自然と「ここで働きたい」と思ってもらえるようになります。 

そして、その上で求人広告では、単に衛生要因を羅列するだけでなく、動機づけ要因が充足している点を積極的に訴求することが、応募者数増加、ひいては定着率向上につながります。例えば、「成長できる環境」と漠然と書くのではなく、「入社後1年で〇〇プロジェクトのリーダーを経験した社員もいます」「社内表彰制度で日頃の努力を称賛しています」といった具体的なエピソードや制度を盛り込むことで、求職者はそこで働く自分の未来を具体的にイメージできるようになるでしょう。

■自社点検シート:求人広告と職場環境の「中身」を見直す

あなたの会社は、求職者にとって魅力的な「中身」を持っていますか?以下のチェックリストを使って、自社の現状を客観的に評価してみましょう。

【衛生要因チェックリスト】
項目はい / いいえ / 要改善具体的な課題・改善策
給与・福利厚生
1. 業界水準と比較して見劣りしませんか?
2. 昇給制度が明確で、適切に運用されていますか?
3. 法定福利厚生(社会保険など)は完備されていますか?
4. 独自の福利厚生(住宅手当、家族手当など)は充実していますか?
労働条件
5. 残業時間は適切に管理されていますか?(無理な長時間労働はありませんか?)
6. 休日・休暇は法的に定められた日数以上確保されていますか?
7. 有給休暇の取得しやすい雰囲気ですか?
8. 休憩時間は適切に確保されていますか?
上司のマネジメント
9. 上司は部下の意見に耳を傾けてくれますか?
10. 指示は明確で、公正な評価をしていますか?
11. ハラスメント行為はありませんか?(相談窓口は機能していますか?)
人間関係・職場環境
12. 社員同士のコミュニケーションは活発ですか?
13. 部署間の連携はスムーズですか?
14. 職場は清潔で、安全な環境ですか?
会社の理念・方針
15. 会社のビジョンやミッションは明確で、社員に浸透していますか?
16. 経営陣の言動と行動に一貫性がありますか?
【動機づけ要因チェックリスト】
項目はい / いいえ / 要改善具体的な課題・改善策
達成感
1. 個人の努力や成果が具体的な形で現れる機会がありますか?
2. 困難な目標を達成したときに、大きな喜びを感じられますか?
承認
3. 上司や同僚から、仕事の成果やプロセスを認められる機会がありますか?
4. 頑張りが報酬や昇進に繋がる仕組みがありますか?
自律性・責任
5. 自分の裁量で仕事を進める機会がありますか?
6. 重要な仕事やプロジェクトを任される機会がありますか?
7. 失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる雰囲気ですか?
仕事内容そのもの
8. 仕事内容に面白さや奥深さを感じられますか?
9. 新しいスキルや知識を習得できる機会がありますか?
10. 仕事を通して、社会貢献やお客様の役に立っている実感がありますか?
昇進・成長の機会
11. キャリアパスが明確に提示されていますか?
12. 研修制度や資格取得支援など、成長を後押しする制度がありますか?
13. 意欲と能力があれば、年齢や社歴に関わらず昇進できますか?
【点検結果と次のステップ】
「要改善」が多い項目

優先的に改善策を検討し、実行に移しましょう。特に衛生要因で「要改善」が多い場合は、まずそこから手をつけることが重要です。

「はい」と答えた項目

これらの項目は、求人広告で具体的にアピールできる強みです。具体的なエピソードや制度を盛り込み、求職者に伝わるように工夫しましょう。

この点検シートを活用し、あなたの会社の「中身」を磨き上げ、本当に「ここで働きたい」と思ってもらえる職場づくりを目指してください。

■まとめ:人を集めるために

求人広告で人を集めたいのであれば、最初に見直すべきは広告文のコピーではなく、職場そのものの状態です。ハーズバーグの「動機づけ=衛生理論」は、採用と定着の本質を突いています。

・衛生要因は整っているか?(不満を引き起こす要因はないか)
・動機づけ要因は備わっているか?(人が成長とやりがいを感じられる職場か)

この2つに真摯に向き合い、改善した「職場の魅力」を求人広告で具体的に伝えることで、単なる採用活動ではなく、長く働き続けたいと思われる企業づくりが始まります。あなたの職場は、今、求職者にどんなメッセージを届けたいですか?

 

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上 康一(みかみ こういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

  

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