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甲子園の裏側に学べ!中小企業が人材を「定着」させる3つの仕組み【三上康一講師コラム】

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甲子園の裏側に学べ!中小企業が人材を「定着」させる3つの仕組み【三上康一講師コラム】

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上康一(みかみこういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

2025年夏の甲子園は、沖縄尚学高校の初優勝で幕を閉じました。決勝戦では、日大三(西東京)を3対1で下し、沖縄県勢としては2010年の興南以来、実に15年ぶりの栄冠となりました。しかし、それと同時に多くの人々の記憶に強く刻まれたのが、準決勝まで進出した県岐阜商業高校の快進撃です。延長10回のタイブレークの末、惜しくも決勝進出は逃しましたが、69年ぶりの準決勝進出という偉業は、岐阜県全体で推進してきた「野球王国・岐阜」の再興プロジェクトの成果であり、地元出身選手たちの奮闘と県の支援体制が結実した結果でした。

このような岐阜県の取組みには、実は中小企業の人材育成や社員定着にも通じるヒントが隠されています。人手不足に悩み、社員が辞めていくことを嘆く前に、岐阜の球児たちが県のサポートを受けて力を発揮した背景に目を向けることで、自社でも応用できる「育成の仕組み」や「社員の定着策」を考えるきっかけになるでしょう。本記事では、週刊ベースボール2025年8月21日配信号を参考に、県岐阜商の躍進の要因を整理しつつ、中小企業に活かせる人材定着のポイントをご紹介します。

参考:毎日新聞「沖縄尚学が初優勝 沖縄勢の頂点は15年ぶり2回目 夏の甲子園
参考:NHK「高校野球 沖縄尚学が優勝 夏の甲子園は初 【詳しく】

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■「流出」を防ぐ仕組み:岐阜県の挑戦

岐阜県が「野球王国」を再興するために行った取り組みのひとつとして、有望な中学生選手が県外の強豪校へ流出することを防ぐ施策が挙げられます。その中心にあったのが「強化指定選手制度」です。

この制度では、中学生の段階から将来有望な選手を選抜し、県から公式に認定証を交付することで、「君は岐阜県の野球の未来を担う存在だ」という期待のメッセージを伝えました。単に練習機会を提供するだけでなく、体力測定や交流試合など、実戦経験を積める環境も整備。選手たちは早い段階から自分の能力が認められ、育成されることを実感できる仕組みが用意されていました。

この取り組みには、大きく2つの効果がありました。

①地元への愛着と帰属意識の醸成
選手たちは「自分が岐阜の野球を担う」という意識を持つことで、県外への流出をためらうようになりました。

②成長意欲の向上
認定されたことで、自分に期待がかかっていることを実感し、練習や試合へのモチベーションが飛躍的に高まったのです。結果として、県岐阜商の甲子園での快進撃につながりました。

この考え方は、中小企業における社員の離職防止にもそのまま応用できます。

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■中小企業に活かせる「人材定着」の3つの仕組み

岐阜県の取り組みから学べる、中小企業が実践できる具体的な人材定着策を3つご紹介します。

1. 1on1ミーティングによる「期待の見える化」

岐阜県が期待できる選手に認定証を交付したように、中小企業では上司が社員に直接、期待を伝える仕組みが必要です。その最も効果的な方法が1on1ミーティングです。定期的に社員と一対一で向き合い、日々の業務の進捗だけでなく、キャリアの目標や会社のビジョンを共有しましょう。この場で「君のこの能力に期待している」「将来はこんな役割を任せたい」と具体的に伝えることで、社員は自分が会社にとって不可欠な存在だと実感できます。これにより、モチベーションの向上と離職率の低下につながります。

この取組みは、以下の心理学的効果を踏まえています。

【ピグマリオン効果】
ピグマリオンとは、古代ギリシャ神話に登場するキプロスの王で、自分で作った彫刻の女性に恋をした人物です。その熱心な思いに心を打たれた愛と美の女神アフロディーテが、彫刻に命を与え、ピグマリオンは彼女と結ばれたという物語です。このエピソードからピグマリオン効果とは、他者からの期待が、その人の行動や成果に良い影響を与える現象を指します。上司が「期待している」と伝えることで、社員は無意識のうちにその期待に応えようと努力し、実際にパフォーマンスが向上します

【自己決定理論】
人間は自律性(自分で決めたい)、有能性(役に立ちたい)、関係性(つながりたい)の3つの欲求を満たすことで、内発的なモチベーションが高まるとされています。1on1ミーティングは、これらの欲求をすべて満たす機会となります。

2. 公的機関を活用した「育成の仕組み化」

育成に十分な予算やリソースをかけられない中小企業にとって、商工会や商工会議所、地域の業界団体などが提供する外部研修を積極的に活用することが非常に有効です。これらの公的機関は、中小企業向けの安価な、あるいは無料の研修プログラムを多数提供しています。ビジネスマナーから専門スキル、マネジメント研修まで、多様な講座があるため、社員のレベルやニーズに合わせた育成が可能です。外部研修を活用することで、自社だけで育成する負担を減らしつつ、社員に「会社が自分の成長を支援してくれている」という安心感を与えることができます

この取組みは、以下の心理学的効果を踏まえています。

【ハーズバーグの動機づけ=衛生理論】
この理論はモチベーション向上の仕組みを明らかにしたもので、モチベーションを左右する要因として、不満を解消する「衛生要因」(給与や労働環境)と、満足度を高める「動機づけ要因」(達成、承認、成長)があるとしています。「衛生要因」の充実はモチベーション上昇に限界があるとされるのに対し、「動機づけ要因」の充実はその限界がないとされます。外部研修は、社員の成長という動機づけ要因を満たすことで、満足度を高めます。

【学習性楽観主義】
困難な状況でも「自分にはそれを乗り越える能力がある」という信念を持つことです。外部研修で新たなスキルを身につけることは、社員に「自分は成長できる」「この会社でなら困難を乗り越えられる」という楽観的な思考を植え付け、離職を防ぎます

3. 「小さな成功体験」を称賛し、共有する文化

岐阜県の選手たちが実戦経験を積み、成功体験を積み重ねていったように、中小企業でも社員の小さな成果を見逃さずに称賛することが重要です。大きなプロジェクトの成功だけでなく、日々の業務での工夫や改善、顧客からの感謝の声など、些細なことでも「成功体験」として称賛し、社内で共有する文化を作りましょう。全社員が集まる朝礼や社内SNSなどを活用し、良い事例を共有することで、他の社員のモチベーションも刺激されます。この文化は、社員に「自分の頑張りは見られている」「この会社でなら報われる」という確信を与え、会社への強い愛着と帰属意識を育みます。

この取組みは、以下の心理学的効果を踏まえています。

【オペラント条件づけ】
「オペラント」は、操作するという意味を持つ言葉です。オペラント条件づけとは、行動の後に報酬(ポジティブなフィードバック)が与えられると、その行動が繰り返されやすくなるというものです。社員の小さな成功を称賛することは、その良い行動を強化します

【自己効力感】
「自分ならできる」という自信のことです。小さな成功を積み重ね、それが認められることで、社員の自己効力感が高まり、より難しい課題にも前向きに挑戦するようになります。この自信は、困難に直面しても「乗り越えられる」と考える原動力となり、離職を防ぐ重要な要素となります。

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■まとめ

どれだけ優秀な人材を獲得しても、彼らが定着しなければ、組織の成長は望めません。県岐阜商業高校が甲子園で躍進した背景には、地元全体で「育成」と「定着」を促す仕組みがありました。これは、高額なコストをかけられない中小企業にとって、非常に大きなヒントとなります。

本記事でご紹介した「1on1での期待の伝達」「外部研修の活用」「小さな成功を称賛する文化」は、特別な予算や大掛かりな制度を必要としません。これらは、社員一人ひとりの「必要とされたい」という欲求や、「成長したい」という意欲に直接働きかけるものです。

社員が「この会社は自分を信じてくれている」「ここでなら成長できる」「自分の頑張りが報われる」と感じられるような環境を整えること。それが、社員の会社への愛着を育み、結果として離職率の低下につながります。

人材は、会社の未来を築く最も重要な資産です。今、自社の人材定着に課題を感じているのであれば、「人がいない」と嘆くのではなく、「人を育て、定着させる仕組み」を構築するチャンスと捉えましょう。岐阜県が示したように、地道な努力と仕組みづくりが、企業の未来を変える第一歩となるはずです。

執筆講師

三上康一さんお写真三上康一(みかみ こういち)
三上 康一(みかみ こういち)

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役

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