労働組合のメリットとデメリットを徹底解説!企業側・従業員側からみた労働組合の活用方法
労働組合は労働者の権利を守るための重要な組織です。しかし、存在は知っていても加入して得られる恩恵が何か分からない方は多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では組合に加入するか迷っている方や企業に向けて、従業員の立場と企業の立場からみたメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
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労働組合のメリットとデメリットを徹底解説!企業側・従業員側からみた労働組合の活用方法
目次
そもそも労働組合とは?
労働組合とは、労働者が自主的に集まり労働条件の維持・改善を目的とした組織団体です。
主な役割は
・労働者と企業が対等な立場で交渉を行う
・交渉が行き詰まった際にストライキやデモなどの争議活動を実行する
・不当解雇やハラスメントから労働者を保護したり救済措置を用意する
などです。
もし労働組合がなかった場合、劣悪な労働条件や環境を改善するよう求めても取り合ってもらえなかったり、不当解雇やハラスメントを受けたとしても対応してもらえなかったりと、権利を不当に侵害されてしまう可能性があります。
労働組合の存在は労働者の権利を守るために必要な組織です。
労働組合のメリット
労働組合は立場の弱い従業員のために作られた組織で、企業相手に交渉することから対立しているイメージを持つ人も多くいるのではないでしょうか?
そのイメージから従業員のみ恩恵があるもので、企業には損しかないように感じてしまうかもしれません。しかし、労働組合は働く側にとっても企業にとってもメリットがあります。
それぞれの視点から、労働組合のメリットを確認していきましょう。
【従業員】労働組合に加入するメリット
労働条件を改善できる
労働組合に加入していれば、従業員は強い交渉力を手に入れることができます。組織の交渉力を駆使すれば、個人では交渉しにくい労働環境や雇用条件も、組合からの要望として要求できるのです。
交渉をうまく運べれば、賃上げや有給休暇の増加、福利厚生の充実などを実現できるでしょう。このように、労働組合では従業員が抱いている不満や要望を使用者に伝えることで、働きやすい環境づくりや労働条件の改善につながります。
法的保護や支援を受けられる
労働上の問題が発生した際に、労働組合に加入していれば救済措置や支援を受けることができるのもメリットの1つです。例えば不当解雇処分を下された場合、労働組合に相談を持ちかければ法的なサポートを受けられ、解雇の撤回や賠償請求を要求できます。
労働組合に加入しておけば企業からの一方的な解雇に悩まされる心配はなくなり、従業員は安心して働けるでしょう。
交流の機会を増やせる
労働組合では従業員に対して労働に関する講演や研修をはじめ、さまざまな社内イベントを行います。イベントに参加すると他の部署の従業員とも交流を図れるため、新たな人間関係の構築ができるでしょう。
その他にも、企業内だけでなく他企業と交流する機会を得られます。社外の関係者と交流できれば、組合活動の幅を広げられることもメリットの1つです。
【企業】労働組合があるメリット
従業員と良好な関係を築ける
労働組合の存在により、従業員は企業に対して労働条件や職場環境の改善に対する要求ができます。これに対して企業側が従業員の声を反映した経営を行えば、両者の間で良好な関係を築けるでしょう。
良好な関係づくりは円滑なコミュニケーションを促し、組合との交流を通じて従業員の持つ不満や悩みなどの問題を見つけられます。問題を早期に解消できれば、ストライキなどの労働争議を未然に防げるはずですね。
従業員のモチベーションを上げられる
企業は従業員に対して満足のいく賃金の支給や、勤務時間の調整といった労働条件の改善など、環境を整えることで従業員のモチベーションの向上を図れます。
従業員が高いモチベーションを持って仕事に取り組めば、
・仕事の質が上がり生産性が向上する
・自社製品やサービスの質が向上し売上アップにつながる
・帰属意識や愛着心が高まり離職率の低下につながる
といったメリットを得られます。
コンプライアンス強化につながる
労働組合では、企業の不正解雇やハラスメントなどの不正行為を禁じたり、不適切な労働環境を改善したりと、組織を健全にする働きがあります。
健全な組織運営はコンプライアンスへの意識を高めることにもつながります。これは従業員の信頼を得るだけでなく、顧客や取引先、投資家などの関係者から良い評価を得られる理由となるでしょう。
労働組合の提案を真摯に受け止め対応すれば、勤務条件や労働環境を改善できるだけでなく、企業のブランドイメージや社会的評価の向上にもつながります。労働組合の存在が、組織の長期的な成長につながるのです。
労働組合のデメリット
さまざまな恩恵をもたらす労働組合の存在ですが、ときに負担となる場合があります。
従業員と企業の両側面からみた、労働組合のデメリットをご紹介します。
【従業員】労働組合に加入するデメリット
組合費の支払いが必要
労働組合に加入をすると、毎月組合費を徴収されます。徴収額は組合によって価格が変わるため一概には言えませんが、一般的に月額3000〜5000円程度です。組合費は組合の活動資金として使用されます。主な用途としては企業との団体交渉や組合員の研修、組合員の福利厚生代などに使用されます。
なかには組合費の徴収に対して負担に感じる人もいるかもしれません。経済的に苦しいのであれば無理して組合に加入しなくても問題はありません。組合費を支払えば労働問題が発生した際に労働上の安全や保証ができる点も考慮したうえで、一人ひとりが加入するかどうか判断する必要があります。
連合総合生活開発研究所(連合総研)が2021年11月実施した第20回労働組合費に関する調査報告書によると、正規従業員組合員の一人当たりの平均月額組合費(加重平均)は5,066円でした。2018年調査の平均月額組合費よりも100円ほど下回る結果になっています。
年度 | 月額組合費(円) | 月額賃金(円) | 月額賃金に占める組合費の割合(%) |
---|---|---|---|
2021年度 | 5,066 | 314,027 | 1.61 |
2018年度 | 5,161 | 309,064 | 1.65 |
2015年度 | 5,023 | 305,048 | 1.64 |
2012年度 | 4,933 | 304,104 | 1.62 |
2008年度 | 4,917 | 300,781 | 1.63 |
参照:連合総研「第 20 回 労働組合費に関する調査報告」8ページ
組合員としての活動に時間を割かなければいけない
労働組合ではさまざまな活動を行っており、組合員は活動への参加を求められます。労働組合へ加入をすると定例会議やイベント、ストライキをはじめとする争議活動への参加などを求められる場合もあります。
組合活動は従業員の権利や働く環境を守るためには必要です。しかし組合活動は基本的に業務時間外に行うことになっています。ワークライフバランスが重視されている昨今、自分の時間を組合の活動に割くのは組合加入のデメリットといえるでしょう。
【企業】労働組合があるデメリット
組合と交渉が生じた場合に手間や労力がかかる
労働組合は使用者と交渉ができる権利を持っています。企業側が団体交渉を申し込まれた場合には、正当な理由がない限り応じなければいけません。
団体交渉が決定した場合、スケジュール調整や事前準備、当日の対応など企業側に手間と労力がかかります。
また交渉内容によっては長期化する場合も考えられるため、交渉に応じている期間は事業運営に影響を与える場合もあるでしょう。
労働組合との対立激化に伴いリスクがある
労働組合と企業の間では、活動目的や意見の食い違いで対立する場合があります。対立が激化してしまうと企業にとって多くのリスクが発生します。
具体的には以下のようなリスクが伴います。
・労働組合によるストライキやデモ活動などの争議活動による多大な損失
・労働委員会への申立てをされたり、裁判所に訴えられたりすることがある
・ニュースやメディアなどに公表されてしまい企業イメージやブランドが損なわれる
労働組合との対立が激化すると企業にとって多くのデメリットがあるため、組合との交渉を穏便にまとめられるように法律の知識やノウハウを学び、良好な関係を築いておきましょう。
労働組合がない場合はどうする?
厚生労働省の「令和5年労働組合基礎調査の概況」によると、組合数や組合員の数は年々減少傾向にあることがわかっています。そのため労働組合に加入したいと思っても企業に組合がない場合があるかもしれません。
労働組合及び労働組合員の状況
令和5年6月30日現在における単一労働組合の労働組合数は22,789組合、労働組合員数は 993万8千人で、前年に比べて労働組合数は257組合(1.1%)減、労働組合員数は5万5千人(0.5%)減少している。
また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.3%で、前年より0.2ポイント低下している。引用:厚生労働省「令和5年労働組合基礎調査の概況」3ページ
では労働組合がない状況で労働問題が起きてしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
働いている企業で労働組合がない場合は、自ら労働組合を結成するか、ユニオンに加入するかの二つの方法があります。
「ユニオン(合同労働組合)」とは、正社員や契約社員などの契約形態に関係なく1人でも加入できる組織です。全国各地に拠点があり、業種や職種を問わず加入できる特徴があります。
ユニオンに加入しようと思った場合は、「所属する業界+ユニオン」などで検索をかけると業界毎の組合を見つけられるでしょう。
労働組合を自ら結成する場合は、労働組合法に沿って適切な手順とルールを遵守する必要があります。誰でも結成できる労働組合ですが、結成までの道のりは簡単ではないかもしれません。
しかし、労働組合があるメリットは大きいため、同じ志を持つ仲間がいれば結成に向けて始動するのもよいでしょう。
労働組合のつくり方
では労働組合がない状況で労働問題が起きてしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
働いている企業で労働組合がない場合は、自ら労働組合を結成するか、ユニオン(合同労働組合)に加入するかの二つの方法があります。
ここではゼロから労働組合を立ち上げる方法と流れをご紹介します。
労働組合は以下の流れで結成するのが一般的です。
①結成準備会を発足
②結成に向けての準備
③結成大会の実施
④組合結成の通知
それぞれ詳しく解説します。
①結成準備会を発足
労働環境や賃金などの労働に関する問題を明確にして、組合の立ち上げを行うための賛同者を集めて結成準備会を立ち上げます。ただし賛同者は誰でも良いわけではありません。
労働組合法で定める労働組合を結成するには、守らなければいけない以下の条件があります。
・労働者が主体であること
・労働者による自主的な組織であること
・活動目的が労働条件の維持および改善が主な目的であること
・労働組合規約に必要な取り決め事項が定められていること
これらの要件は、労働組合法によって定められています。条件に合致しない場合は、法的に労働組合として認められず、労働組合法による保護を受けられないため注意が必要です。
労働組合法 第二条
この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。引用:e-GOV 法令検索「労働組合法」
上記の条件から、メンバーに部長や課長などの監督的な地位のある方やマネジメント層、役員は加入できません。
②結成に向けての準備
組織の結成に向けて計画を立てたり規約を作成したりと準備を行います。
結成に向けて取り掛かる主な準備は以下の5点です。
・組合に加入してくれる仲間を集めて目的や決意を共有する
・労働法や労働組合法の理解を深めるために勉強会を開く
・同じ業界の労働組合の活動を調査して参考にする
・組合の基本方針や規約、予算案などを策定する
・結成大会の開催日時や場所などの詳細を詰める
③結成大会の実施
準備が整ったら賛同者を集めて結成大会を開催します。
結成大会とは、新しい労働組合を正式に設立させるために開催される会議です。
結成大会では主に
・労働組合の目的や基本方針の確認
・組合の規約やルールの承認
・推薦や選挙を行い組合の役員を選出
・活動計画の承認
・労働組合の設立宣言
などの基礎的な運用基盤を整える手続きを行います。
結成大会で規約が承認されれば、労働組合が誕生します。
④組合結成の通知
従業員側が団体交渉を求める場合、企業へ組合結成の通知をするケースが多くあります。
通知の際は「労働組合結成通知書」を作成して企業に提出しましょう。「労働組合結成通知書」とは、労働組合が新たに作られたことを会社に知らせる書類です。
結成通知書に記載する内容は主に以下のとおりです。
・結成した事実の記載
・労働組合名
・労働組合結成日
・執行委員長名
・副執行委員長名
・執行委員名
・書記長
・執行委員
まとめ
労働組合の存在によって、企業側も従業員側もさまざまなメリットが得られます。しかしデメリットもある点には注意が必要です。労働組合が企業にない場合には、組合を立ち上げたりユニオンに加入したりといった方法が考えられるため、適した方法で労働環境改善に取り組みましょう。
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