中執アカデミー通信No.5:はじめてのオルグ【梶浦正典講師特別コラム】
講演サーチおすすめの梶浦正典講師による特別連載。
好評につき「中執アカデミー通信」としてスタートしました。

中執アカデミー通信No.5:はじめてのオルグ【梶浦正典講師特別コラム】
執筆講師

ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席コンサルタント
はじめに
皆様、こんにちは!
中執の!元中執による!中執のための「中執アカデミー通信」では「なかなか他では聞けない本音ベースでの中執の悩み」にスポットをあててお伝えしていきたいと思います。
組合員のために、とか。会社の発展のために、とか。
きれいごとばかり聞かされてうんざりしている中執の方も多いと思います。
労働基準法やら労働組合法やら。人事制度や労働協約やら。
そんな大上段に構えた「労組とは!」ではなく、身近な中執のお悩みに寄り添い、ともに解決策を創りだしていく。
「中執アカデミー通信」はそんな場所にできればと思います。
過去の連載はこちら
中執アカデミー通信No.1
中執アカデミー通信No.2
中執アカデミー通信No.3
中執アカデミー通信No.4

はじめてのオルグ
労働組合によってそれぞれのやり方は異なると思います。
執行部方針を説明し、各支部で採決までする単組。
執行部方針の説明だけにとどまり、各支部から意見を聴取する単組。
支部を訪問し、今年度の執行部方針を伝えるイベント、非常に重要ですよね。
さて、私が専従を務めていた時期に、この「中央執行委員が支部を訪問し、執行部方針を説明するイベント(「オルグ」という名称を使わない単組もあるかと思いますが、以下、「オルグ」で統一します)に対する組合員の声をヒヤリングしたところ、以下のような不満が噴出しました。
・原稿を読み上げるだけならば時間のムダなので現場も忙しいので資料の配布だけにしてほしい。
・執行部方針に対して反対意見を言ったらその場で説教をされた。組合員の声を会社に届けることが執行部の役割ではないのか?
・毎回オルグ後の懇親会をセットさせられるのが苦痛。懇親会の場でも中執が自慢話をしたり説教じみた話をしたりして、正直接待をさせられているような気分になる。
・毎回上記状況なのでオルグへ参加希望する人はいない。正直、人を集めるのに苦労している。
・無理矢理集まってもらった若手組合員数名のみ。オルグ自体に意味があるのか。
等々。
非常に厳しい声をいただきました。
どうしても中執の立場になると「執行部方針を通すこと」が目的になってしまいます。
そうなると、組合員から反対意見や質問が出てきたときに
「そんなこと言っても会社が潰れてしまったら意味がないだろう?」
「会社の状況をわかっていないなあ。もっと深く考えて発言しないと」
「労働基準法とか知ってる?労働組合法とか理解している?」
「もっと全体のことを考えて発言すべきだよ」
などと説教訓戒指示命令。
相手を説得しにかかってしまいます。これをやられた組合員はたまったものではありません。
皆さんも支部にいたときのことを思い出してください。
自分の仕事だって忙しいにも関わらず、なんとか時間をつくって周りも誘ってオルグに参加したにも関わらず、自分の意見や質問は潰される。
オルグへの参加率が低迷するわけですよね。
私が心理学を学び始めて、最も衝撃を受けたことが「聴く」ことの難しさと「聴けない理由」でした。
悪意は無いのです。そして自分自身は聴いているつもりなのです。
ただ、人間は不満や悩み、クレーム、トラブルの報告等、自分にとって都合の悪い話が飛んでくると「ストレス」を感じます。
「ストレス」を感じると動物が選択する方法は逃げるか戦うか。これは自己防衛本能ですので無意識にやってしまいます。
だから人間は「聴いているつもり、わかっているつもり」なのに無意識に「逃げる(回答を避ける、話題を他にずらす)か戦う(説教訓戒指示命令)か」の行動をとってしまう。
相手からすると「聴いてもらえなかった、わかってもらえなかった」という反発の感情を与えてしまうのです。
当時の私たち専従グループはここから変えようと考えました。
どんなに厳しい組合員の批判や意見であっても
「必ずまずは1分間黙って聴こう。わかろうとしよう」
これを心に決めてオルグに向かいました。
「1分間黙って聴こう」とココロに決めることで、「ストレス」を一瞬コントロールすることができるのです。
たったこれだけのことでオルグの雰囲気が一変したのです。
・オルグの場で意見を言ってくれる組合員が増えてきた
・懇親会に参加してくれる組合員が増えてきた
・「もう少し話を聴いてもらえませんか」懇親会の後で声をかけられることが増えてきた。中には朝までカラオケボックスの中で泣きながら話をしてくれる組合員も出てきた
・組合イベントに協力してくれる人が増えてきた
・「こういう組合活動だったら自分も中執をやってみたい。専従をやってみたい」という組合員が出てきた
私たちにとってびっくりするような変化でした。
一方で、私たちのストレスも以前とは比較にならないくらい溜まるようになりました。
オルグが終わった後、専従同士で連絡をとりあって
「こんなに辛い想いを打ち明けてくれた」
「自分たちはこんなことにも気づけていなかった」
「朝まで辛い胸のうちを打ち明けてくれた。何もできない自分が苦しかった」
お互いの苦しみを共有し、支えあっていました。
そうなのです。
それくらい「組合員の声をしっかり聴く」ということは大変なことなのです。
それまでのオルグは正直
「地方に行って、若い組合員と飲みに行って、先輩としていろいろ教えてやって、気分良く帰ってくる」
私自身そんな感覚があったのだと思います。
私がそんな気分でオルグに臨んでいたのだから、支部の組合員から信頼され、尊重される執行部になんかならないですよね。
現場の組合員の話を聴く。
現場の組合員の苦しいココロに寄り添う。
そんなオルグであってほしいのです。
そして組合員から意見をもらうことを恐れないでください。
よく元専従等から言われたことが
「組合員から意見や要望をもらっても、それが実現できなかったら組合に対する諦め感が加速する。だからアンケート等は安易にやってはならない」
私はそうではないと思います。
しっかりと組合員の声を聴き、それをしっかりと会社に伝える(もちろんそのままではなく、執行部としてロジックを整備したうえで)。
そのうえで意見をくれた組合員に「できたこと、できなかったこと、その理由」も含めてちゃんとフィードバックをする。
そして「実現はできなかったけれど、意見をくれてありがとう」ちゃんと感謝の言葉を伝える。
こうした丁寧なコミュニケーションを心掛けていれば組合員はまた意見をあげてくれるようになるのです。
これは組合員一人ひとりを尊重する、ということと同義だと私は思っています。
最初のうちは「オルグの場」は緊張すると思います。
なかなかうまくいかないこともあるかと思います。
それでも「組合員の声を、自分のストレスに負けずにまずは聴く」意識をもっていただけたらとおもいます。
もちろん、執行部方針をわかりやすく、そして組合員が楽しく聞けるような上手なプレゼンの技術も大切になってくると思います。
その前に「聴く」こと
「まず、組合員を変えようとするな。わかろうとせよ」
ココロにとめて、オルグに臨んでいただければと思います。

執筆講師

ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席コンサルタント




