採用危機を打ち破る!中小企業が今すぐ変えるべき「数字の見せ方」革命【三上康一講師コラム】

中小企業が今すぐ変えるべき「数字の見せ方」革命
目次
執筆講師

株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役
■貴社の求人票は誤解されていませんか?
人手不足が深刻化する今、貴社の採用力は求人票の書き方で損をしているかもしれません。同じ有給取得率、同じ年間休日数でも、その「見せ方」ひとつで求職者の印象はまるで別物になります。実際、多くの中小企業が「平均値」という数字に頼ることで、本来の魅力を自ら埋もれさせ、求職者から「休めない会社」という誤解を招いています。
採用難が常態化する今、数字の並べ方ひとつが応募数を左右する決定打になり得ます。中小企業こそ、数字の「見せ方」を変えるだけで採用力を劇的に上げることができます。本記事では、有給取得率・年間休日取得日数の提示方法をどのように工夫すれば、求職者に響く情報へと変わるのかを解説します。
■コンテクスト効果の正体とは?
コンテクスト効果という言葉をご存知でしょうか? これは、同じ事実やデータであっても、どのように提示するかによって人々の印象や意思決定が大きく変わるという心理学的な現象です。例えば同じ商品であっても、それが高級店に陳列されると高級に見えてしまうというものです。
この効果を採用活動で活用するには、数字やデータを効果的に「見せる」ことがポイントとなります。例えば、企業が求人票で「有給取得率」を公開する際、単に全社員の平均取得率を示すのではなく、その数字にどのような文脈(コンテクスト)を付加するかによって、求職者が持つ企業に対する印象が大きく変わるのです。
また、年間休日取得日数も重要な要素となります。休日の付与日数ではなく、実際にどれだけ休みが取れるかを知りたい求職者にとって、年間休日取得のデータは非常に効果的な情報です。
では、有給取得率と年間休日取得日数の「見せ方」をどのように工夫すれば求人応募を増やすことが可能になるのでしょうか。
■有給取得率と年間休日取得日数の「平均値」では誤解を生む
求人票に有給取得率や年間休日数を記載する際、企業の多くは全社員のデータをまとめて「平均値」として提示します。しかし、これが必ずしも実態を正確に伝えているわけではありません。
特に、中高年社員と若手社員の有給取得状況や年間休日数に大きな差がある場合、平均値だけで提示すると、休暇が取りづらいという誤解を招くことがあります。例えば、中高年社員が役職を持ち、責任感から積極的に休暇を取らない場合、そのデータが全体に影響して平均が低くなることがあります。
■中高年と若手では休みに対する意識が違う
中高年社員の中には、役職を持ち、仕事の責任が増すことで積極的に休暇をとらない方もいます。加えて、家庭環境が安定していることが多く、より多くの時間を仕事に費やしたいと考える方もいます。
一方、主に20代・30代の若手社員は、積極的に休暇を取り、仕事の負担と育児や家庭の負担を両立させ、ワークライフバランスを重視したいと考える人が多い傾向があります。ビジネスだけでなくプライベートも充実させたいという意欲に満ちているといえます。
そこで、有給取得率や年間休日取得日数を年代別に分けて提示すると求職者の受け取り方がまったく変わります。平均値では隠れてしまう「若手はしっかり休めている」という実態が浮かび上がり、求職者にとっては 「自分が入社したらどう働けるのか」を具体的に想像できる材料 になります。
逆にいえば、年代別の情報がない求人票は、
・若手も休みにくいのでは?
・働きやすさが年代で偏っているのでは?
という不安を生み、応募を遠ざけてしまいます。
数字そのものを変えなくても、「どの年代の社員が、どれだけ休めているのか」を見せるだけで、「働きやすい会社」という印象が強まるのです。
■求職者は「自分に関係あるデータ」を求めている
求職者は、入社後の働き方や休暇取得の実態を知りたいと考えていますが、特に自分と同じ属性の人がどう働いているか注目します。
年代別のデータは、求職者が自分事化しやすく、具体的に自分の働き方をイメージしやすくなります。
年代別の有給取得率と年間休日数を公開することで、企業として若手社員には休んでいる環境が整っているという事実が可視化されます。ただし、それだけでは効果は限定的です。
■中高年社員の「価値観の押し付け」が採用ブランドを壊す
中高年社員の有給取得率や年間休日取得日数(実際の取得数)が低い場合、求職者や若手社員からは、「この会社は休暇を取りにくい文化なのでは?」と誤解されてしまうことがあります。
特に問題なのは、中高年社員が若手に対して「休まないのが美徳」「頑張ることが当然」といった価値観を押し付けてしまう場面です。この空気がひとたび職場に蔓延すると、若手は遠慮して休みを取りにくくなり、結果として休みにくい職場が形作られてしまいます。
中高年層が長い経験で培った責任感は組織にとって大きな価値ですが、その価値が 「若手の休暇取得を阻む圧力」として働いてしまっては本末転倒です。
■若手を休ませる側に回る──中高年社員の器が職場文化をつくる
いま企業に求められているのは、若手が休める環境を支える側に回るという、中高年社員の器の大きさです。
・「若手が休むのは当然」
・「しっかり休んでもらい、長く働ける会社にしよう」
こうしたメッセージを中高年社員が発信できるだけで、職場の空気は劇的に変わります。
重要なのは、中高年と若手が同じ価値観で働こうとすることではありません。それは本質的に不可能であり、時代背景・働き方・家庭環境が大きく異なる以上、価値観が違うのは当然です。
会社がすべきなのは、価値観の違いを認め合う文化を作ることです。
・若手はワークライフバランスを重視する
・中高年社員は社内での責任や役割を重視する
その違いを前提としたうえで、互いの働き方を尊重できる職場こそ、定着率も生産性も高まります。
■組織として取り組むべきこと
価値観の違いを受け入れつつ、若手が休みにくくならない環境を整えるために、企業には次のような取り組みが求められます。
・中高年社員に対する「若手を休ませる側」に回ってもらう教育
・年代による働き方の違いを理解するワークショップ
・休暇取得を奨励する社内キャンペーン
・休みを取ることが長期的なパフォーマンス向上につながることを啓発する
こうした取り組みを続けることで、世代間のギャップが緩和され、「誰もが気持ちよく休暇を取れる会社」という企業文化が形づくられていきます。
■まとめ:数字は変えなくても、“見せ方”を変えれば採用力は変わる
採用市場では、企業が発信する数字以上に、その数字がどのような文脈で語られているかが重視されます。これこそが、今回ご紹介したコンテクスト効果の本質です。
同じ有給取得率でも、同じ年間休日取得日数でも、「平均値で見せる」のか「年代別で見せる」のか──その違いだけで、求職者の受け取る印象は驚くほど変わります。
・「若手がちゃんと休めている会社」
・「価値観の違いを尊重してくれる職場」
・「世代間の摩擦がない健全な組織文化」
こうした魅力は、数字そのものでは伝わりません。文脈を整え、正しく見せることで初めて伝わるものです。
採用力は、企業規模の大小では決まりません。限られた情報量のなかで、いかに自社の魅力を“誤解なく伝えるか”これが採用で勝つための最大の武器になります。
数字を変える必要はありません。変えるべきは「見せ方」と「コンテクスト」です。 この小さな工夫こそが、人手不足時代を生き抜くための大きな一歩となります。まずは自社の有給・休日データを年代別に分けてみてください。その瞬間から、貴社の採用力は大きく変わり始めます。

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株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役




