募集広告で応募者を惹きつける!心理学を活用した効果的な広告作成術【三上康一講師特別コラム】

募集広告で応募者を惹きつける!心理学を活用した効果的な広告作成術【三上康一講師特別コラム】
目次

執筆講師
三上康一(みかみ こういち)
株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役
■はじめに
人材募集の広告は、単に職種や給与条件を伝えるだけでは応募に結び付きにくく、読み手の心理に働きかける工夫が必要です。そこで活用したいのが、心理学に基づいた「希少性の原理」や「社会的証明の原理」です。これらの心理効果を上手に取り入れることで、応募者の関心を引き、より多くの応募を集めることができます。本記事では、効果的な募集広告の作成方法を解説します。
■希少性の原理とは
「希少性の原理」とは、需要(欲しい量)よりも供給(手に入る量)が少ない時、そのものの価値が高まるという心理現象です。この原理を実証した実験として、社会心理学者ステファン・ウォーチェルが実施した「クッキー実験」が有名です。これは、参加者を2つのグループに分け、片方のグループには10枚のクッキーが入った瓶を渡し、もう一方のグループには2枚しか入っていない瓶を渡し、瓶の中のクッキーを食べてもらうというものです。
どちらの瓶にも、同じクッキーが入っているにもかかわらず、クッキーを食べた後、2枚しか入っていない瓶のクッキーを食べた参加者の方が、そのクッキーの評価が高かったという結果が出ました。この結果から、希少性のあるものは、より価値が高く感じられることがわかります。
この「希少性の原理」を人材募集に応用することも可能です。例えば「3月末までに3名限定でスタッフ募集!」という募集告知は、応募を検討する者にとってその職場で働くことが特別で価値があると感じさせることができます。また、応募の締め切りを設けることで、時間的なプレッシャーを与え、早めに応募しないと枠が埋まってしまうかもしれないという感覚を生み出すことができます。
さらに以下の心理効果も併せて活用するとより効果が高まるでしょう。
■社会的証明の原理とは
「社会的証明の原理」とは、人は他者の行動や意見を参考にして、自分の行動や判断を決める心理的な現象です。つまり「多くの人が選んでいるものや、していることを自分も正しいと感じやすい」というものです。
ネット上のレビューや口コミ、人気商品ランキングなどは、社会的証明の原理を活用した一例です。他の人が「良い」と評価しているものに対して、自分も安心して選ぼうとする心理が働きます。これを活用すると、商品の販売やサービスの選択において、他の人の行動や意見が強力な影響を与えることができます。
この原理を実証するための実験として有名なのが、心理学者ソロモン・アッシュの実験です。この実験では、参加者に2枚のカードを見せますが、下図のように左のカードには1本の直線が描かれ、右のカードには3本の直線A、B、Cが描かれています。そのうち直線Cは左のカードの直線と長さが等しくなっています。
実験の参加者のうち1名以外は、実際には実験者によって操作された回答者、つまりサクラであり、全員が左のカードの直線と同じ長さの直線はAかBと答えます。するとサクラではない参加者もAかBと答えることがわかりました。
そこで、現在勤務しているスタッフの感想をインタビューし、その内容を募集広告に掲載すると応募を考えている人に「他の人も働いているから安心」と感じてもらうことが期待できます。
ただし、そのインタビュー内容を捏造することは絶対に避けるべきです。嘘はすぐに見抜かれるものですし、SNSで暴露されると逆効果になりかねません。また、良い感想だけでなく、悪い意見も示すことで、より信頼性のある情報となり、信憑性が高まります。
■効果的な広告媒体とは
社会的証明の原理を活用するべく、スタッフのインタビュー結果を店頭看板やチラシに掲載すると、記載内容が多くなってしまい、応募者の注意を引くのが難しくなるリスクが高まってしまうかもしれません。そこで、インターネットの活用がポイントとなりますが、特にSNSの活用が効果的と言えます。
例えば、Threads(スレッズ)は、Instagramアカウントを使用してログインし、テキストや画像、動画を共有することができます。2023年7月6日にサービスが開始され、5日間で1億人のユーザーを集めました。最大500文字のテキストを投稿でき、リンクや写真、最長5分の動画を共有できます。また、他のユーザーの投稿を再投稿(Repost)したり、引用(Quote)したりすることもでき、2025年2月現在、非常に勢いのあるSNSと言えるでしょう。
Threadsの利用者は、比較的若い層とされており、情報の拡散力も高いことから、労働力確保のための有効的なツールと言えます。このようなSNSで募集を行う場合は、以下のポイントに注意しましょう。
・定期的に投稿し、フォロワーの関心を維持する
・写真や動画などの視覚的なコンテンツを使って、注目度を高める
なお、店頭に募集の看板を設置したり、張り紙をしたりすることはネットでの募集の効果を高めるとされます。
ツナグ働き方研究所の調査によると、ネットで募集広告を見た方の半数以上が、応募する前に職場の様子を見に来ています。飲食店や小売店などであれば、顧客として利用しに来ているわけです。この下見の際に、店頭に募集広告があることで、実際に募集していることがわかり、安心して応募しやすくなります。
■募集広告で訴求するべきこと
コンサルティングやブランディングを手掛ける株式会社ESSPRIDEが、経営者と一般社員合計400名を対象に「会社のホームページやパンフレットに社長の顔写真がある場合とない場合、どちらが信頼できるか?」という質問に答えていただきました。結果として、経営者の62%、一般社員の79%が「顔写真がある方が信頼できる」と答えました。
さらに、20~49歳の正社員に対して「就職や転職をする際に、会社のホームページやパンフレットに経営者の顔写真がある会社とない会社を比較して、どちらの面接を受けたいか?」と尋ねたところ、69%が「顔写真がある会社」、または「どちらかと言えば顔写真がある会社」の面接を受けたいと答えました。
これらの結果から、求人広告において応募者は給与や仕事内容だけでなく、「誰と一緒に働くのか」という点も重要視していることが分かります。経営者や職場のリーダーの顔写真を掲載することで、信頼感や親近感を与えることができるため、ぜひこれらの写真を募集広告に加えることをおすすめします。
■まとめ
人材募集広告の効果を最大化するためには、単に職種や給与条件を伝えるだけでは不十分です。「希少性の原理」や「社会的証明の原理」と言った心理効果をうまく活用することで、応募者の関心を引き、より多くの応募を集めることができます。希少性を感じさせる言葉や限定的な募集条件を提示することで、価値を高めることができ、社会的証明を通じて他の人々の行動や意見が応募の意思決定に影響を与えることが可能になります。
また、SNSや店頭掲示を効果的に活用することで、情報の拡散力を高め、応募者の関心を維持することができます。さらに、経営者や職場リーダーの顔写真を載せることで、応募者に信頼感や親近感を与え、応募者が「誰と働くか」という点を重視する心理を満たすことができます。
適切な心理的アプローチを取り入れ、応募者が安心して応募できる環境を整えることが、採用活動の成功につながります。今後の人材採用活動において、ぜひこれらのポイントを参考にして、効果的な募集広告を作成してください。

執筆講師
三上康一(みかみ こういち)
株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役