人手不足倒産増加!中小企業が採用で失敗しないための「相性」重視の選考術【三上康一講師特別コラム】

人手不足倒産増加!中小企業が採用で失敗しないための「相性」重視の選考術【三上康一講師特別コラム】
目次
- 人手不足倒産増加!中小企業が採用で失敗しないための「相性」重視の選考術【三上康一講師特別コラム】
- 執筆講師
- ■増加する人手不足倒産
- ■早期退職が既存従業員に及ぼす影響
- ■相性の判断基準
- (1)理屈を重視するか/情を重視するか
- (2)競争を重視するか/協調を重視するか
- (3)行動を重視するか/思考を重視するか
- (4)革新を重視するか/伝統を重視するか
- (5)スピードを重視するか/緻密さを重視するか
- ■相性を見極める質問例
- (1)理屈を重視するか/情を重視するかを見極める質問例
- (2)競争を重視するか/協調を重視するかを見極める質問例
- (3)行動を重視するか/思考を重視するかを見極める質問例
- (4)革新を重視するか/伝統を重視するかを見極める質問例
- (5)スピードを重視するか/緻密さを重視するかを見極める質問例
- ■まとめ
- 執筆講師

執筆講師
三上康一(みかみ こういち)
株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役
■増加する人手不足倒産
採用活動では、スキルや経験だけでなく、応募者と企業の相性を重視することも重要です。相性の悪さは早期退職の一因となり、企業にとって大きな損失です。大企業であれば配属先と人材の相性が悪ければ配置換えが可能ですが、小規模事業者はそれが難しいため、採用段階で慎重に選考することが必要です。
株式会社東京商工リサーチの調査によると、2024年に人手不足が原因で倒産した企業は289件に達し、前年比で81.7%増と大幅に増加しました。これは2013年以降で最も多い件数であり、特に資本金1,000万円未満の事業者が186件と全体の6割以上を占め、深刻な状況であることが明らかになりました。

画像引用:株式会社東京商工リサーチ「「人件費高騰」の倒産が急増、人手不足が深刻に 2024年の「人手不足」倒産 過去最多の289件」
© TOKYO SHOKO RESEARCH, LTD.
そこで当コラムでは、採用面接で相性を見極める「5つの軸」と具体的な質問例を紹介し、採用活動の成功に向けたポイントを解説します。
■早期退職が既存従業員に及ぼす影響
人材不足にあえぐ企業がようやく人材を採用できた場合、既存の従業員は、人材不足から解放されることを期待します。ですが、新規の従業員が数日で辞めてしまったら、落胆し士気が低下します。やっと仕事が任せられるようになった段階で退職される場合も同様です。
これが何度も繰り返されると、既存従業員の流出も始まり、人手不足はますます進み、企業の存続が危機を迎えることになります。
よって、早期退職を防ぎ、既存従業員の士気低下による流出が起こらないようにする必要があります。
■相性の判断基準
前述のとおり配置換えが困難な小規模事業者は、相性の良い人材だけを採用することがポイントとなります。とはいえ、応募者を選別するほど応募者がいないという事業者もあるでしょう。ですが、相性を無視して人材の頭数だけそろえても、早期退職されてしまえば、採用や育成にかかる手間が無駄になるだけでなく、既存人材の士気が低下してしまうことは前述のとおりです。
応募者と自社の相性を見極める際に「相性の5軸」の活用をお勧めします。これは、両者の価値観がどの程度一致しているかという点が、人材の定着率に影響を及ぼすというものです。株式会社リクルートエージェントが、第二新卒(大学卒業後に新卒として入社したものの2年以内に離職し、再度就職活動を行う若者)クラスの6,000人を対象に実施したアンケート調査から見出されました。それは、就職後早期に転職活動を始めた人たちのほとんどは、本人と企業が下記5軸のどれかが一致していないというものです。
参考:日経ビジネス「企業と人の相性を見分ける5軸と、面接の必殺技」
(1)理屈を重視するか/情を重視するか
判断の基軸を示します。人は、何かを決断する際、最終的には「理性」か「感情」が大きく影響します。感情を排除して合理的に判断する傾向があるのか、感情で決めてしまう傾向があるのか、という違いです。
(2)競争を重視するか/協調を重視するか
周囲との関係で重視する点を示しています。成果に重点を置いて競争する傾向にあるのか、チームワークに重点を置いて協力する傾向にあるのかといった点の違いです。
(3)行動を重視するか/思考を重視するか
評価の重点を示します。まずは行動し、その結果に応じて思考をしていくのか、それともしっかり考えてから行動を起こすかの違いです。
(4)革新を重視するか/伝統を重視するか
思考の方向性を示します。変化を恐れず常に新しいことに挑戦する傾向にあるのか、これまでの方策を大事にして安定的な推移を重視する傾向にあるのか、の違いです。
(5)スピードを重視するか/緻密さを重視するか
仕事への基本的な姿勢を示します。スピードを重視して「品質はともかく早く仕上げる」という判断をする傾向なのか、正確性を重視して「時間をかけてでも間違いなく」という判断をする傾向なのかの違いです。
例えば、自社は上図の左側にある〇のついた「理屈」「行動」「競争」「伝統」「緻密」を重視するとします。これに対して応募者は上図の右側にある〇のついた「情」「思考」「協調」「革新」「スピード」を重視するのであれば、相性が合わないので早期に退職するリスクが高いと判断できます。
またこれら5つの軸は、全て一致していることが早期退職の予防につながります。どれかが一致していないことに妥協して採用してしまうと、早期退職されてしまうリスクが高いことに留意しましょう。
さらに、これら5つの軸が一致していることは、同質な人間を採用することではありません。早期退職のリスクが高いか低いかの観点であることにも注意が必要です。
そこで、まず自社はどちらに振れているかを明確にした上で、採用面接の場では応募者がどちらに振れているかを見極めます。そして、振れている方向が自社と一致しているかを確認し、採用の判断基準とすることが効果的です。
■相性を見極める質問例
以下では応募者がどちらに振れているのかを判断するための質問をご紹介していきます。
(1)理屈を重視するか/情を重視するかを見極める質問例
この質問の解答が、あくまでも貸さないという内容であれば理屈重視、キャッシングをして150万円を貸すのであれば情け重視と言えるでしょう。
(2)競争を重視するか/協調を重視するかを見極める質問例
この質問の解答が、競争に勝った・負けたという内容が多いのであれば競争を重視する傾向が強く、チームワークに関する内容が多いのであれば協調を重視する傾向が強いと判断できます。部活をやってなかった方に対しては「他者に対して負けたくないと思った経験」を聞くことでも判断は可能でしょう。
(3)行動を重視するか/思考を重視するかを見極める質問例
この質問の解答が、ルールなのでお断りするということであれば行動重視、まずは上司に相談して返答するということであれば、思考重視と言えるでしょう。
(4)革新を重視するか/伝統を重視するかを見極める質問例
この質問の解答が、現在の看板とは全く違うデザインであれば革新重視、現在のデザインを踏襲した看板であれば伝統重視と言えるでしょう。
(5)スピードを重視するか/緻密さを重視するかを見極める質問例
この質問の解答が、とりあえず完成させるという内容であればスピード重視、待ってもらってでも納得のいくものを作るのであれば、緻密重視と言えるでしょう。
■まとめ
近年の採用活動では、応募者と企業の相性を見極めることが重要です。人材と組織のミスマッチによる早期退職を防ぐため、採用段階での慎重な選考が求められます。
相性を見極めるために、「相性の5軸」を基に質問を行い、応募者の傾向を把握することが有効です。
具体的な質問例を活用して、応募者がどちらに振れているかを判断し、自社との相性を確認しましょう。相性の良い人材を採用することで、早期退職を防ぎ、既存従業員の士気低下による流出も防ぐことが可能になります。

執筆講師
三上康一(みかみ こういち)
株式会社ロードサイド経営研究所代表取締役