労働組合とは?法律や制度との関わり、難しい専門用語について講演依頼のプロがわかりやすく解説
この記事では労働組合とは一体どんな組織なのかをわかりやすく解説しています。労働組合について聞いたことや存在を知っていても具体的な活動内容まで理解している方は少ないのではないでしょうか。この記事を通じて活動内容や役割を押さえておきましょう。
労働組合とは?どのような法律や制度を知るべき?
労働組合がどういった組織なのか知りたい。
法律や制度の観点から、組合とは何かわかりやすくお伝えします!
労働組合の活動は多岐にわたり、さまざまな法律や制度、専門用語を知る必要があるため、すべてを理解するには多大な労力が必要ですよね。労働組合に関して講演依頼のプロであるアクトパートナーズがわかりやすく解説します。
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労働組合とは?法律や制度との関わり、難しい専門用語について講演依頼のプロがわかりやすく解説
目次
労働組合とは?
労働組合とは労働者が労働条件の維持・改善を図るために自主的に集まった組織です。
企業と対等な立場で話し合いを行い、賃金の引き上げや労働条件の改善を目的に活動をしています。
一般的に労働者と企業は雇用関係にあるため、労働者は企業の意向に従って業務内容や勤務地などが決められます。そのため労働者は賃金をはじめとする労働条件に不満を抱いても、交渉する機会や余地は基本ありません。
仮に個人で労働条件の改善に対する打診ができても、企業側が要望を聞き入れてくれる可能性は低いでしょう。要求が通らないだけならまだしも、目の敵にされ解雇や降格、減給、ハラスメントといった報復行為を受けるのではと不安を覚える従業員もいるかもしれません。
個人では立場が弱いため、不満があっても改善の手立てがないと、よりよい労働条件を求めて転職を選ぶようになるでしょう。
しかし労働組合があれば、労働者の総意として要求ができるため発言力が増し、企業側も無視できない存在になります。企業と対等に交渉できる労働組合は、労働者の労働環境を守る存在です。
労働組合のメリットとデメリットは「労働組合の定義と基本的な役割、メリットやデメリットを網羅して解説」でお伝えしています。
労働組合の主な役割
労働組合が労働者の労働条件を良くするために活動する組織であるとは分かっても、具体的にどんなことをしているのかイメージしづらいですよね。
そこで労働組合について理解を深めるために、どのような役割を担っているのかを確認していきましょう。
労使間での交渉
労働組合では労働者と雇用主である使用者との交渉を行うことが主な役割です。
雇用主に対し労働条件の改善を目的に交渉をして契約(労働協約)を締結させ、労働者にとってより働きやすい環境づくりや労働条件を確保することを目標に活動をしています。
交渉が行き詰まり要求が通らない場合には、ストライキやデモ活動などを実施するケースもあるでしょう。ストライキやデモ活動を通じて雇用主に要求を強く訴え、労働条件の改善を図ることも役割の1つです。
労働者の権利保護
雇用主から労働者の権利を保護することも労働組合の役割です。
働くうえで労働者には以下のようなさまざまな権利が定められています。
・適正な賃金をもらえること
・安全で快適な労働環境で働くこと
・差別なく平等に扱われること
しかし企業によっては不当解雇やハラスメントなどが横行し、労働者の権利が侵害されてしまうケースもあります。そのため不当解雇やハラスメントなどから労働者を保護するための相談窓口を設置し、トラブルに対し適切な対応やサポートを提供しています。
情報共有や教育
労働組合では労働者に対して、情報共有や教育を行う役割も担っています。
組合に所属している労働者(組合員)に対して、さまざまなセミナーや講演会、研修を開催しています。
ミナーや研修を通じて、労働者のスキルアップや意識の向上を図ることも、労働組合の役割です。
労働組合の4つの種類
労働組合には企業単位で存在する組織以外にも、さまざまな種類の組合があります。
労働組合は主に
・位組合
・産業別組合
・ナショナルセンター
・ITUC(国際労働組合総連合)
の4つの種類に分けることができます。
労働組合には企業単位で存在する組織以外にも、さまざまな種類の組合があります。
労働組合は主に4つの種類に分けることができます。
それぞれどのような特徴や役割があるのかをみていきましょう。
単位組合
単位組合は、同じ企業の労働者が結束して出来上がった組合のことを指します。日本では単位組合が主流なので、労働組合と聞いたら単位組合をイメージする方が多いのではないでしょうか。
単位組合は、使用者に対して労働条件や職場環境、福利厚生や報酬の改善を交渉するのが主な役割です。
企業ごとに組合が結成されるため、従業員の声を反映させやすい特徴もあります。
労働者のニーズにあった労働条件の提案ができるのも、単位組合ならではの強みでしょう。
産業別組合
産業別組合は、同じ業界の企業にある単位組合が結束してつくりあげた組織です。
産業組合では同業種の方が集まるため、似たような労働環境である場合が多いです。お互いに情報交換をしながら、業界間の労働条件や労働環境のさらなる改善と発展について話し合うことを目的としています。
ナショナルセンター
ナショナルセンターは複数の労働組合が集まってつくる国を代表した組織です。日本では、日本労働組合総連合会(連合)や全国労働組合総連合(全労連)などが該当します。
ナショナルセンターでは政府と直接交渉できる力を有しているため、労働者の悩みや要望を政府に伝えられることが大きな特徴です。
その他にもナショナルセンターでは産業別組合同様に春闘を実施しています。ただし産業別組合とは役割が違うため混合させないよう注意してください。
日本労働組合総連合会が定義する春闘とは「労働組合が労働条件について要求し、使用者(経営者)と交渉し決定すること」とされています。
春闘の役割は、
・各組合の要求を調整して賃上げ要求などの目標を統一させる
・賃金の動向や経済状況などの調査結果を提供し現実的な交渉を行えるようにサポートする
・交渉をする際に専門的なアドバイスや法律的観点からみた助言などを行い交渉を支援する
などです。
「春闘」ってなに?
毎年2月頃になるとニュースを賑わす「春闘」。連合では「春季生活闘争」を正式名称としています。
多くの企業にとって新年度となる4月に向けて、労働組合が労働条件について要求し、使用者(経営者)と交渉し決定することをいいます。大手企業を中心に、労働組合が企業に要求を提出するのが2月、企業からの回答が3月頃であることから、「春闘」と呼ばれているのです。
引用:日本労働組合総連合会「初めての労働問題でもよくわかるコラム「春闘」ってテレビでよく聞くけど…」
ITUC(国際労働組合総連合)
ITUCは世界各国のナショナルセンターが集まってつくる労働組合の国際組織です。
ITCUでは国際的な労働条件の改善や労働環境を整えて、働きやすい社会をつくることを目的に活動をしています。
またITUCは、国際労働機関(ILO)などの国際機関と連携して、グローバルな労働政策の提案や実現を目指している団体です。
労働組合の結成や活動に関する「労働組合法」
これまで労働組合の概要や役割を主に伝えてきました。ここからは労働組合を法律的な視点で紹介します。労働組合法とは労働者が組合を組織して使用者と対等な交渉ができるように関係性を定める法律のことです。
(目的)第一条
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
引用:e-GOV法令検索「労働組合法」
労働組合の取り組みを知るうえで大切なポイントは以下の5つです。
・労働三権の保障
・不当労働行為の禁止
・労働協約の取り決め
・労働委員会の設置
・労働争議による賠償責任の免状
それぞれわかりやすく解説します。
労働三権の保障
労働組合法の存在によって労働三権が保障され、労働者は権利の行使をしやすくなります。
・団体権:労働者が団結して労働組合を立ち上げ活動する権利
・団体交渉権:使用者に団体交渉を取り付ける権利
・団体行動権:ストライキをはじめとする争議行為ができる権利
これら3つの権利を総称したものです。
労働組合法では、労働三権の効力が発揮しやすくなるような条例が明記されています。
具体的には、
・使用者は労働組合の活動を妨げてはいけない(団体権の保障)
・交渉の申し入れがあった場合には、応じなければいけない(団体交渉権の保障)
・ストライキなどにおいて正当な理由がある場合罪に問われない(団体行動権の保障)
労働三権が保障されることで労働者は権利を行使しやすくなり、企業に対して労働条件の改善を要求するための活動に取り組めます。
不当労働行為の禁止
不当労働行為とは、組合員に対して不当な妨害や干渉をする行為のことです。
該当するものとして
・労働組合の活動を理由とした解雇や降格などの不当な処分
・労使交渉を正当な理由なく拒む
・組合の設立の妨害
などがあります。
労働組合法において上記の行為は禁じられており、問題が発覚した場合、組合員は労働委員会に申し立てを行うことができます。
使用者が不正を働くと、以下の罰則やペナルティが課される場合もあるため注意が必要です。
・罰金や損害賠償請求
・広報誌やメディアなどに企業名を公表
罰則やペナルティは使用者からすると損害が大きいため注意したいですよね。法律上の決まりをしっかりと把握しておくことが大切です。
労働組合法の「不当労働行為」とは?
労働組合法では、使用者が以下の行為を行うことは禁止されています。〔1〕 労働組合への加入や正当な労働組合活動などを理由に、解雇、降格、給料の引下げ、嫌がらせ等の不利益取扱いをすること。(ただし、一定の場合に、いわゆるユニオン・ショップ協定またはクローズド・ショップ協定を締結することは妨げられません。)
〔2〕 団体交渉を正当な理由無く拒否すること。
〔3〕 労働組合の結成や運営に対して支配・介入したり、組合運営の経費について経理上の援助をすること。(ただし、労働者が労働時間中に、時間や賃金を失わず使用者と協議・交渉することや、使用者が福利その他の基金に対する寄付をすること、使用者が労働組合に最小限の広さの事務所を供与することは除きます。)
〔4〕 労働者が労働委員会に救済を申し立てたり、労働委員会に関する手続において行った発言や証拠提出を理由に、不利益取扱いをすること。使用者から不当労働行為を受けたときは、労働組合または労働者は労働委員会に救済を申し立てることができます。
引用:厚生労働省「労働組合-労働組合法の「不当労働行為」とは?」
労働協約の取り決め
労働組合法では労働協約に関する効力の保障や締結に関する条例が記載されています。
労働協約とは、組合と使用者の間で締結される労働条件に関する約束です。
労働協約には以下のように労働条件に関する項目が記載されています。
・賃金:基本給や昇給、賞与、手当などの賃金に関する取り決め
・労働時間:所定労働時間や残業時間、休憩時間、休日など
・労働条件:労働環境や福利厚生など
・人事制度:昇進や昇格の基準、評価制度などの取り決め
労働協約を通じて労働条件の向上が期待でき、労働者の働きやすい環境をつくることができるでしょう。
労働協約
労働協約とは、労働組合と会社との間の約束のことをいい、双方の記名押印等がある書面で作成された場合にその効力が発生します。ここに定める労働条件等に違反する労働契約や就業規則は、その部分が法的に無効とされます。
また、労働協約は、一定の要件を満たすことで拡張して適用されます。引用:厚生労働省「労働協約の拡張適用について」
労働協約の効力は強く
労働契約<就業規則<労働協約<法令<憲法
といった効力関係にあります。
企業の就業規則よりも労働協約のほうが効力があるため、内容に相違があった場合には、相違点に関しては労働協約が優先されます。
(基準の効力)第十六条
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。
引用:e-GOV法令検索労働組合法」
労働委員会の設置
労働組合法第19条では、労働委員会に関する条文が明記されています。
労働委員会とは労働者と雇用主の間で発生した労働関連の問題を解決するために、調停や仲裁などの手続きを行う公的な機関です。日本では中央労働委員会と都道府県労働委員会が存在します。
労働委員会では主に
・不正労働行為の審査:労働組合が不正労働行為を受けていると判断した場合に救済措置をとる
・労働争議の調停:争議行為に対して労使間に仲介し、双方の合意を得られるよう支援する
・労働組合の資格審査:労働組合法に定める一定の資格要件を備えているか、資格の有無の審査をする
などの役割を担います。
労働委員会の存在によって労働組合は法律の保護下で活動でき、労働者の権利が守られる仕組みが整えられているのです。
労働争議による賠償責任の免状
労働組合法第8条には、ストライキなどの労働争議において正当な理由であれば労働組合や組合員の賠償責任は免除される条例があります。この条文の存在で、労働組合や組合員は経済的な報復に怯えることなく団体行動権を行使できます。
(損害賠償)第八条
使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。
引用:e-GOV法令検索「労働組合法」
争議行為は労働者が使用者に対して交渉力を持つための重要な手段であり、賠償を免除させることは労働者の争議行為を保護し、労働組合の活動を支える重要な規定です。
組合が労働組合法に適用される為の条件
労働組合法の存在によって使用者に対し団体交渉の取り付けや、ストライキなどの争議活動を行なっても、正当性があれば刑事責任や民事責任の免除などの恩恵を得られます。
組合は誰しもが結成できる権利を持っていますが、労働組合法に適用されるためにはいくつか条件があります。
労働組合法に適用される条件には以下の4つです。
・労働者が主体の組織であること
・活動の目的が労働条件の維持や改善であること
・組合は労働者で構成されていること
・民主的な運営が行われていること
上記の条件を満たしていれば法的保護を受けることができ、団体交渉やストライキなどの団体行動を通じて労働者の権利を守る活動に従事できます。
労働組合法に適用されない禁止条件
組合が労働組合法に適用させるためには、満たしてはいけない条件があります。
以下の条件に1つでも該当しているものがあった場合には、労働組合法に適用されないので注意しましょう。
・社長や役員の指示のもと結成されるなどの労働者の自主性が欠けている団体
・組合員に経営者や役員、管理職が含まれている場合
・組合の活動目的が政治的、宗教的なものである場合
労働組合法に適用されなければ法的保護を受けることはできません。
法的保護がないなかで団体交渉やストライキを行おうとしても、「交渉にまともに応じてもらえない」「不当労働行為を受けても救済措置がない」「ストライキなどの争議行為で発生する刑事責任や民事責任を問われる」といった制約を課されてしまう可能性があります。
制約があるなかでは満足のいく活動を行えず、組合員の権利が十分に守られない可能性が高まるため注意が必要です。
まとめ
ここまで労働組合の定義や役割から、法律や専門用語を交えつつ解説をしてきました。労働組合の仕組みを知っておけば労働者がどのような権利を持ち、どんな法律で保護されているのか認識できます。
労働組合の仕組みがあっても、活用できなければ意味はありません。労働組合について正しい知識を身につけ、うまく活用しましょう。
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