Vol.1 最高の顧客体験を実現しているテーマパーク流お客様サービスとは?【今井千尋講師特別コラム】


Vol.1 最高の顧客体験を実現しているテーマパーク流お客様サービスとは?【今井千尋講師特別コラム】
目次
執筆講師

ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席コンサルタント
●プロローグ
株式会社ワンダーイマジニアで代表取締役をしております、今井千尋(いまいちひろ)と申します。
弊社ワンダーイマジニアは、テーマパークにて人事、人材育成、人材開発をしてきた集団です。その多才なメンバーの経験、あらゆる現場で人的課題解決を積み重ねてきた体験を基に磨き上げてきたユニーク且つ、私たち元テーマパークの育成のプロフェッショナルだからこそ、伝えることができる”テーマパーク流人材育成メソッド”という独自メソッドを開発しました。
現在も尚、研究し、進化し続けている”テーマパーク流人材育成メソッド”の大切な考え方、ポイントを皆さんにご紹介できる機会を頂き、とてもワクワクしています。
まずはワンダーイマジニア・小職が何者なのか、”テーマパーク流人材育成”について少しご紹介したいと思います。
弊社・自己紹介とテーマパーク流人材育成の起源について
私は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドにて、ジャングルクルーズというアトラクションから全てが始まりました。子供の頃の「ジャングルクルーズの船長になりたい!」という夢を叶える貴重な体験から全てがスタートしました。
私にとって、この体験はとても幸運なことであり、”人の可能性を追求する原点”にもなっています。ディズニーランドを創業したウォルトディズニーの「夢は願うものではなく、叶えるものなんだ!」という精神を身をもって入社時に追体験できたことも、現在の人材育成・人材開発のプロとしての原体験となっています。
また、東京ディズニーリゾートへと飛躍した東京ディズニーシー開業時、企業内大学ディズニーユニバーシティでの導入研修講師として、数千人の仲間を東京ディズニーリゾートの現場へ送り出す教育業務に従事できたこと、人材育成の素晴らしさ、面白さ、醍醐味を経験できたこと、気づけたことは、とても有意義な機会でした。
その後、ユニバーサルスタジオジャパンを運営するユー・エス・ジェイに入社。パークの人材育成、人材開発業務を担うあらゆる部署のトレーニングチームに配属。各部署の人材育成の現場を支えるとても貴重な経験を積み重ねてきました。全社人事では、企業人材育成、人材開発も担当。「ユニバーサルアカデミー(企業内大学)」を一から立ち上げる貴重な機会、全社ゲストサービス向上施策(マジカルモーメントプロジェクト)に立ち上げメンバーとして育成を担当者として関われたことは、さらなる知識、技術に磨きをかけるきっかけとなりました。
まだまだ、書ききれない程の多くの体験、経験をさせて頂いたテーマパークでの体験が今の私の核となっています。
テーマパーク流人材育成とは何か?
多くのゲストを常に魅了し続けるテーマパーク、
働く人も前向きに自ら考え、その企業文化に相応しい選択、実践、表現ができる人材、チームが育ち続けるテーマパーク。
そんなテーマパークならではの「場づくり」と「人づくり」の考え方やそのやり方を自身の体験、経験から体系化したものが”テーマパーク流人材育成メソッド”です。
例えば、このような状態を創り出すことを目的としています。
・心理的安全が高い”場”であり、一人ひとりが、成長実感を感じ、さらに成長意欲を持った”人材”が育つ
・エンゲージメントやWell-Beingが浸透し、仕事に誇りと遣り甲斐を感じ、イキイキと活躍する”人材”が育ち、互いに仕事の素晴らしさ、それぞれの特徴を活かし合いながら、シナジーを生み出し続けている場
・自律型人材(=自ら考え行動し、成果結果を生み出し続ける)が育ち続けている
・人材を”人的資本(=人財)と捉える企業文化とその構造”へ
(=人材が、自社内教育や研修、日々の現場業務などを通じ、自己の能力や経験、モチベーションなど意欲的に向上し、その体験が一人ひとりのかけがえのない体験・経験として蓄積することで、私たちの現場にとって、なくてはならない付加価値を生み出す”人財=価値を創造する源泉である資本”)という存在として”人”を最も大切にするという考え方とその実践。その風土醸成が次の世代へ引き継がれていく
(一部抜粋)
など、現在、あらゆる企業現場において、とても重要視し、大切にされている要素であるこのような在り方、考え方をテーマパークという現場では、昔から当たり前のように大切にし、その考え方を育み、やり方を進化発展させてきました。
私自身も、人材育成、人材開発担当者として、「場づくり」「人づくり」を軸に、コツコツと何年もかけて自身が積み重ねてきた上記のような考え方やそのやり方を磨き上げてきました。どの企業現場でも適応し、再現できる為に、今も企業現場と連携し研究開発に励みながら、さらなる進化をし続けています。
「働く仲間がワクワクする価値を創り出し続け、ゲストから信頼され、選ばれ続けるディズニーランドやユニバーサルスタジオのような現場を全国に広げたい!」という志から、このメソッドが生まれたのです。
日本中の中小企業様から大手企業様、地方自治体様、国の施設に至るまで、様々なあらゆる業種業態の人事・人材育成・人材開発領域にて”テーマパーク人材育成メソッド”を駆使することであらゆる現場での人的課題解決に貢献し、全国の企業現場で成果を創り出し続けています。
読んで頂いている皆様の企業現場にも、”テーマパーク流人材育成メソッド”がお役にたつ、成果を創り出す機会、ご縁につながれば幸いです。
まずは、これから12回にわたり、”テーマパ―ク人材育成メソッド”をさらに知って頂く機会となり、皆様の企業現場に”ワクワクする価値を創り出す!」ヒントを提供していきます。
こちらのコラムを通して、皆様の企業において”テーマパーク流人材育成メソッド”によって人が成長し、さらに輝くきっかけ作りの機会が生まれれば、とてもワクワクしますし、嬉しいです。
記念すべき第1回のテーマは、「最高の顧客体験を実現しているテーマパーク流お客様サービスとは?」というテーマにて書き上げました。皆さまの現場社員さん、スタッフの皆さんと共に是非とも、このテーマについて深掘りをして頂き、現場に活かして頂けましたら嬉しいです!

●サービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違い
最高の顧客体験についてお話しする前に、知っておいて欲しいことがあります。
みなさんは、サービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違いを理解しているでしょうか?
サービスとおもてなしは、似ているようで、実は全く違います。しかし、私たちは時に何が違うのか、わからなくなってしまうことが多くあります。
サービスとおもてなしを同じだと捉えてしまう理由は、特に日本ではサービスとおもてなしが融合していることが多いため、違うと感じる人が少ないこと。またお客様もそうした状態を求めていることが多いので、同じに見えてしまうからです。
しかし、ホスピタリティサービスを生業としているテーマパークでは、この2つの違いをしっかりと理解し、現場でどのように活かしていくのかが、とても大事です。それは、皆さんの働くお店でも同じことです。第1回目は、このサービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違いについて、詳しく考えてみたいと思います。
●お客様が”サービス”に対して求めていることとは?
“サービス”とは何か。例えば、テーマパークにて1,000円のハンバーガーがあったとします。それに1,000円払い、食べた時にお客様が「よかった!」と感じる。この一連の流れがサービスです。つまり、このハンバーガーには、1,000円の価値があるということです。
では、「1,000円の価値がなくなる瞬間」とは、どんなときでしょうか?「美味しくない」「ハンバーガーに挟まれている具材の量が少ない」「ハンバーガー自体が冷めてしまっている」「添えられているポテトの量が少ない」などでしょうか?もし、そんなことがあったら、”損した気分”になりますよね?そう、『サービスは、劣化すると損した気分にさせてしまう』んです!これがポイントです!
ですからサービスでは、1,000円の商品であれば、1,000円分の価値をしっかり伝えていかなくてはならないということです。つまり、1,000円という金額を払って当然だという価値が、そのサービスになければいけないということです。
別にプラスにする必要はありません。“お客様の当たり前が、当たり前にできているかどうか”ということなのです。テーマパークの場合、お客様は街場のお店で受けるサービス以上のことを期待されています。ですから、スタッフの笑顔やアイコンタクト、お声がけなどを含めて、期待をしっかり担保した内容を安定的に提供し続けるというのが、「サービス」です。
きっと皆さんの各現場でも、お客様は皆さんに対して期待しているレベルがあるはずです。それは、もしかしたら、お客様とは直接話していない内容かもしれません。まずはそのレベルがどのこあるのかを見つけ出すことからスタートし(顧客にアンケートを取ったり、インタビューしたり、時に提供側の我々にてお客様がどのように感じられているのか仮説を立て、実際の顧客の回答と擦り合わせ、そのギャップを分析してみたり・・・)、それが安定的に提供できているのかどうかをチェックすることが必要です。
●お客様がおもてなし(ホスピタリティ)に求めていることとは?
次におもてなし(ホスピタリティ)とは、サービスを提供する側の言動に対して、お客様との利害関係がない。つまり、”対価”は関係ありません。つまり、見返りは求めないということになります。これが、おもてなしの前提となる考え方です。
おもてなし(ホスピタリティ)は、”おもてなしの精神”という表現を私たちはよく使いますが、「もっとお客様に喜んでもらおう」「お客様が悩ましく思うことはないかな?それをいち早く解決して喜んでもらおう」という心からの想いを行動や言葉に表すことばであり、意味です。
●おもてなし(ホスピタリティ)が更に研ぎ澄まされると、どうなるのか
お客様が当たり前と思っていることを当たり前に提供できるサービスができ、そして”おもてなしの精神”での対応が当たり前以上にできるようになる。そのおもてなし(ホスピタリティ)が研ぎ澄まされると、次に“マジカル”という段階が見えてきます。
“マジカル”が実践できている人は、”ファンを増やす”ということが、できている人です。お客様がパークでとても素敵な感動できるような体験ができれば、そのお客様はきっとパークやその体験をさせてくれたスタッフのファンになってくださいます。トップレベルの人たちは、自然とそうした機会を提供し、ファンを作るということができているのです。
つまり、最高の顧客体験とは、ファン作りの機会の創出であるとも言えます。この最高の顧客体験によって、ファン作りの機会を創り出す力を私たちは”マジカル=お客様を魅了する”と呼んでいます。
おもてなし(ホスピタリティ)とこの”マジカル”に注力できる状態をできるだけ早く作ることが、最高の顧客体験に繋がる機会をより多く作ることもできるようになり、今より貴社現場や社員さん、パートアルバイトさんのファンは増えていきます。
そして、このおもてなし(ホスピタリティ)と”マジカル”は、現場でのお客様対応時だけやりましょうということではなく、日常生活の中で育んでいくものです。仕事以外でも、関わるすべての人たちに対して、こんなことをやってあげたら喜ぶんじゃないか、感動して頂けるのではないか、という機会を探すことができれば、目の前の全ての人が、大切なおもてなしを学ばせてくれる人になるのです。
OFF-JTのようなどこかの会議室で講師の先生が講義をしているだけが、学びではなく、日常生活そのもの、仕事現場そのものが、トレーニング(学び)の場であり、関わる人全てがユースケースとして、成長の機会に使えるということです。
私たち人事、人材育成、人材開発を志す側の皆さんが、現場の社員さん、パート、アルバイトさんに是非とも、上記のような意識改革を行って頂き、“現場の仕事=私たちが成長する場”なんだという意識づけをしてみてください。
このようなことから、テーマパークの現場で活躍している人たちも、何か特別なことをやっているわけではなく、どこにでも存在する相手を想う気持ち、それを行動で表現する姿勢、更におもてなし(ホスピタリティ)と”マジカル”を磨くために、日々現場業務の中から学び、行動し続けているのです。
執筆講師

ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席コンサルタント
今井千尋
神奈川県出身。専門は ホスピタリティサービス ・ リーダーシップ・チームビルディング・コミュニケーション・テーマパーク流人材育成・テーマパーク流人材開発 。 株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役
東京ディズニーリゾート、ユニバーサルスタジオジャパン元人材育成トレーナー/人事・人材育成担当。日本の人事部主催”HRアワード”入賞作品「Disney&USJで学んだ現場を強くするリーダーの原理原則内外出版」など著書多数。テーマパーク流人材育成・人材開発メソッドを基に執筆、講演、研修、人材開発コンサルティング(人材育成、人材開発の仕組みづくり)などを全国クライアント企業にて実施。全国にファンも多く、日々、現場の活性化の為に飛び回っている。
